研究大会
シンポジウム報告
2018.10.4
今回、久々に研究大会に参加をした。懐かしい会員の皆様にお会いし、温かく声をかけていただいたことに胸が熱くなると同時に、長くなってしまったブランクに申し訳なさを痛感した。庄内の生活体験学校も10数年ぶりの訪問となった。シンポジウムでの正平会員の報告から、この30年の間に生活体験学校を取り巻く状況が激変し、中でも大きな転機が12年前の市町村合併と3年前の指定管理者受託で、運営体制が変わり、通学合宿や体験学習の内容も変わったことを知る。しかし、目の前に見える景色は少し年季が入っているが、10数年前と変わらない生活の匂いがする。激動の中、30年の長き月日を重ねてこられたことに心から敬意を表したい。
学会設立20周年記念シンポジウムとあって、学会立ち上げ前の会合を思い出した。6人の先生方の議論から始まったこの学会。21年前は、生活体験学習への着目が高まった時でもあった。学校教育、社会教育、学社連携と様々な形で体験学習をどう作り上げていくか、また子どもの心と身体の育ちの危機にどう対峙するかという課題もあり、それを生活体験学習という切り口から乗り越えるために、生活体験学習の理論化を目指そうと作られた学会だったことを、上野会員からの報告で思い出した。フロアでも話題になったが「生活体験学習をどう英訳するか」life needs experience learning のneedsに込められた意味は、生活を作り上げるために必要な体験で、人間として必要な生活文化があることを示唆している。そのneedsの部分をどれだけ研究成果にできたか、自身に問い掛け、自分の研究が至らなかったことに恥じ入るばかりである。
相戸会員の報告は、乳幼児親子の生活体験学習の実践・研究の経緯の内容であり、私が今身を置いている保育者養成と関連が深い分野で、興味深く聞いた。保育の世界では、子どもの主体性や遊びを軸に保育活動を考えるため、生活習慣などは「身につけさせる」と言いたくなるところを、「身近な環境に関わりたい気持ちを育て、引き出す」ようにする。相戸会員は午前中に自由研究発表もされており、その内容も相まって、楽しい気持ちや意欲、子どもの自尊心を育てる生活体験学習の可能性を感じることができた。
自由研究発表報告
2018.10.4更新
日本生活体験学習学会第20回研究大会の自由研究発表は、会場である飯塚市庄内生活体験学校で、2018年9月8日(土)10時から行われた。
今回は4件の個人発表があった。最初の土田秀仁会員による発表は、認定こども園の幼児を対象とした食事と睡眠についての生活記録をもとにして、早寝早起きに着目し、その達成傾向によって園と家庭との子育ての協働を裏付けようとしたものであった。二つ目の原口サトミ会員による発表では、2000年以来の「ありんこクラブ」の活動内容と、「なかつプレーパーク」の事業展開について詳細な紹介が行われ、活動の成果が報告された。三つ目の永田誠会員による発表は、園の保護者懇談会における親の「語り」に着目し、園との関わりによって親が子育てのさまざまな側面を理解していくようになることを示し、園が親の学びを支える機能を有することを明らかにしたものであった。最後の相戸晴子会員による発表では、生活困難を抱えている特定の子どもとその周辺の追跡調査をとおして、子育てサロンに通うことによって彼らがどのような変化を遂げていったのかが明らかにされた。
司会からの質問を待たず、フロアからは絶え間なく質問意見が寄せられ、活発に応答や意見交換が行われた。いずれの発表も、幼児の子育てや家庭教育支援に関わるものであり、この分野への関心の高さをうかがい知ることができた自由研究発表であった。
第20回研究大会を終えて
2018.10.4更新
会長 古賀 倫嗣
(放送大学熊本学習センター)
日本生活体験学習学会第20回研究大会は、9月8日(土)、飯塚市庄内生活体験学校を会場に開催されました。本学会は、1999年9月、庄内町立生活体験学校(当時)において「第1回 日本生活体験学習学会実践交流会」が開催されたことから始まります。
20周年にあたり、記念シンポジウム「この20年、子どもたちの『生活体験』はどう変わったか」を開催しました。「NPO法人体験教育研究会ドングリ」理事長の正平辰男会員、家庭教育支援活動の実践者でもある相戸晴子会員、「生活体験学習」の理論的研究を進める上野景三会員の3名をシンポジストに迎え、私、古賀倫嗣がコーディネーターを務めました。その詳細については「シンポジウム報告」に譲りますが、20年前、「庄内生活体験学校開設10年」の実践の成果から誕生した本学会の「これまで果たしてきた役割と到達点」と「これから取り組むべき課題と展望」を明らかにすることにより、「生活体験学習論」の構築に向けた問題意識の共有化、分析視角の深化と多様化につながるものになったと思います。
また、翌9日には、「NPO法人体験教育研究会ドングリ」の主催事業として「第2回生活体験発表会」が開かれ、「子どもと保護者が語る通学合宿体験」「支援ボランティアの活動」等の事例発表が行われました。それに先立って午前中には、当時高校生を担い手に実施されていたボランティアネットワーク「ひこうき雲」参加者の懇談会が開催され、40歳代になった今、「生活体験」がそれぞれの人生においてどう意味づいてきたかを知る貴重な機会となりました。
さらに、20周年記念事業の一環として、「名誉会員」及び「学会表彰制度」が設けられ、総会の場において「名誉会員証」の授与式が行われました。名誉会員には、初代会長の横山正幸会員、同じく副会長の正平辰男会員が推挙され、また、長年にわたる「生活体験学習研究への貢献」を称え、井上豊久会員、桑原広治会員に対し「表彰状」が授与されました。
最後になりましたが、本研究大会の運営につきまして格別のご高配とご尽力をいただきました庄内生活体験学校の皆様、また関係者の皆様に厚くお礼を申し上げます。
第20回研究大会会場(生活体験学校)へのアクセスについて
2018.7.13
生活体験学校様からアクセスについての補足がございました。
車でご来場の場合はご一読下さい。
車のカーナビをご使用の場合、生活体験学校の電話番号を入力すると、隣の運輸会社へ案内されることが多いようです。
近くの施設として、福岡カホスイミングスクール(℡0948-82-3166)があり、この番号で入力して近くまでお越しください。
国道201 号線からこられる場合も、八木山バイパス経由の場合も近くまで来られると黄色の点滅信号で昇り坂になりますので、坂を昇ってください。その後は、案内看板に沿って進んでください。
日本生活体験学習学会第20回研究大会のご案内
2018.7.13
日本生活体験学習学会
学会長 古賀 倫嗣
日本生活体験学習学会は、2018年、「学会設立20周年」という大きな節目を迎えます。本学会は、1998年12月26日、子どもの生活体験に係る研究者、実践者、行政関係者等により設立準備会を開催、1999年9月18・19日、庄内町立生活体験学校を会場に「第1回日本生活体験学習学会実践交流会」、2000年3月18・19日には、福岡県立社会教育総合センターを会場に「日本生活体験学習学会第1回研究大会」が開催され、1999年度、本学会は、研究・実践の両面で社会への発信を開始しました。
ここで特筆しておきたいことは、生活体験学校で開かれる「実践交流会」と「研究大会」がまさに「車の両輪」として、本学会の発展を支えてきたということです。こうした経緯を踏まえ、記念すべき第20回研究大会は(旧)庄内町立生活体験学校を会場に開催することになりました。現在、生活体験学校は「NPO法人 体験教育研究会ドングリ」を指定管理者として、正平辰男会員を中心に、志を持ったスタッフによって精力的な運営が行われています。そして、何よりも2018年は「生活体験学校開設30年」の年でもあります。
こうしたことから、第20回研究大会は、「学会設立20周年」と「生活体験学校開設30年」という大きな節目にかんがみ、「本学会と生活体験学校との協働のかたち」を表すプログラムの工夫をさせていただきました。具体的には、9月8日(土)は学会20周年記念シンポジウム「この20年、子どもたちの『生活体験』はどう変わったか」を開催、翌9月9日(日)には「NPO法人ドングリ」の企画として生活体験発表会が開かれることになっております。会員の皆様方には、9月8・9日両日のご参加を心よりお願い申し上げて開催のご案内とさせていただきます。
「NPO法人ドングリ」生活体験学校開設30周年記念 第2回生活体験発表会
※参加される場合は日本生活体験学習学会事務局ではなく、直接NPO法人ドングリにお申し込み下さい
第2回生活体験発表会
第20回研究大会(学会設立20周年記念大会)開催のご案内
2018.2.28
本年度、日本生活体験学習学会は設立20周年を迎えます。また、学会設立の契機となった、「庄内町立生活体験学校」(現在は飯塚市庄内生活体験学校)の取り組みも、30周年という大きな節目を迎えます。「車の両輪」として走ってきた「学会」と「学校」との協働を具現化する方向で、第20回研究大会は、学会創立20周年記念大会として、「庄内町立生活体験学校」(飯塚市庄内生活体験学校)での開催を予定しています。多くの皆様のご参加を、心よりお待ちしております。
会場:飯塚市庄内生活体験学校
〒820-0111 福岡県飯塚市有安958-1
日程:2018年9月8日(土)・9日(日)
※プログラムの詳細については,確定次第,改めてご案内いたします。
第20回研究大会自由研究発表申し込み募集
2018.2.28
第20回研究大会(学会設立20周年記念大会)の自由研究発表を,以下の要領で募集いたします。日頃の実践や研究の成果を報告し,新たな展望へとステップするためのまたとない機会です。会員の皆様,どうぞ奮ってエントリー下さい。
◆日 程 2018年9月8日(土)午前中(予定)
◆発表時間 個人発表20分・質疑5分 共同発表25分・質疑5分
◆発表申し込み
・自由研究発表を希望される方は,別紙の「日本生活体験学習学会第20回研究大会自由研究発表エントリー用紙」に必要事項をご記入の上,事務局までお送り下さい。
・締切日:2018年 3月 31日( 土 )必着
・申込方法:メールもしくは郵送にて受け付けます。(FAXは不可)
◆注意事項
・発表者ならびに共同発表者は本学会の会員であること。
・2018年度までの会費を完納していること。
※発表者ならびに共同発表者は,以上の2点を満たしておく必要があります。
◆発表要旨提出
発表申込をされた会員には,学会事務局より発表要旨に関しての連絡をいたします。
その連絡事項に従い,学会事務局まで発表要旨を下記の日程までにご提出下さい。
・締切日:2018年 7月 31日( 火 )必着 (締切厳守でお願いします)
学会企画シンポジウム報告
2017.10.5更新
9月3日、シンポジウム「コミュニティ・スクールにおけるカリキュラムづくりをどうすすめるか-カリキュラムづくりへの地域・保護者参加と体験学習の構築」を開催した。
次期学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」がキーワードとなり、コミュニティ・スクール(以下CS)には、教育課程編成に関わる役割が期待されている。社会と結びついた授業を展開し、新しい時代に応じて求められる資質・能力を育成していくためには、学校教育において体験学習が今まで以上に重要になってくると考えられる。そこでシンポジウムでは、四人の実践報告に基づき、学校教育での体験学習の位置づけとCSの役割について議論した。司会は上野景三会員(佐賀大学)、長尾秀吉(別府大学)である。
中川忠宣会員(大分大学)は、様々なCSの効果と、殆どの教員は多忙にならないことを調査データで示し、教職員の意識改革の必要性を指摘された。伊東俊昭氏(佐伯市宇目緑豊小学校長)は、学力の高さと自尊心の低さという発達の偏りを解消するために、学校において達成感を味わえる「本物」の体験学習の必要性を説いた。朝倉脩二氏(都城市庄内地区まちづくり協議会事務局長)からは、庄内地区4校(3小・1中学校)を地区全体で支えるCS懇話会の仕組みと協議会による教師のための地域巡視研修の取り組みについて報告された。植村秀人氏(南九州大学)からは、学校教育での農業体験実習の有効性(教材化が容易、住民が主導しやすい、地区組織が活性化する等)について報告された。
質疑では、「学校の体験学習をどう評価するのか」、「体験学習と子どもの実生活との乖離をどうするか」、「主体的な体験は学校教育で可能か」等の本質的な質問があり、非常に有意義な議論を行うことができた。各報告から、学校教育において質の高い体験学習の実現が可能であること、そのためにどのような工夫や努力が必要であるのかを学ぶことができた。四氏に感謝申し上げる。
プロジェクト研究担当理事
長尾 秀吉(別府大学)
現地企画シンポジウム報告
2017.10.5更新
9月2日(土)午後、現地企画シンポジウム「幼児期からの生活体験」を開催した。近年注目を集める“幼児期からの子どもの育ち”をテーマに、“宮崎の先進的な実践報告”を交えながら、本学会の原点である“生活体験”について議論する場が設けられたこと自体に、大きな価値があったように思われる。
シンポジウムの第一部では、宮崎の豊かな実践が報告された。「あいいく幼稚園」の椎葉恵子園長からは、自然環境を生かした躍動感のある体験が子どもの日常に根付いていく姿を、「石井記念友愛社」の児島草次郎理事長からは、児童養護施設の中での発達保障の大切さと自立教育の意義を、短い時間の中で存分に語って頂いた。コメンテーターである横山正幸会員(福岡教育大学名誉教授)の「断片的ではなく連続的な、質の高い体験である」という言葉に代表されるように、一つのモデルとなり得る魅力的な実践報告であった。
それを受けて第二部では、研究者による話題提供が行われた。野﨑秀正氏(宮崎公立大学)からは、自身の家庭での生活体験実践が語られるとともに、「カリキュラムの顕在性」が高く「園と家庭との連続性」のある生活体験の可能性が示唆された。山下(宮崎国際大学)からは、環境心理学の立場から、生活体験の「自己化」を促す子ども主体の遊びの重要性について話題提供を行った。山田裕司会員(南九州大学)からは、保育施設を対象とした全国調査の結果を元に、園庭のない園の地域との連携の在り方を紐解きながら、園と地域との連携の多様性が示された。
質疑応答では「地域とは何を指すのか」、「幼小の連続性の難しさ」、「社会的養護の今後」について議論された。幼児期からの生活体験にスポットライトが当たったからこそ、今後深めるべき論点が見出されたのではないだろうか。
最後に、コーディネーターである古賀倫嗣会員(熊本大学)から「①幼児期の発達の可能性」、「②基本的信頼関係の重要性」、「③子どもの遊びの価値」の三点がまとめとして提示され、本シンポジウムは無事閉会となった。参加者各々に持ち帰るものがあったのであれば幸いである。
第19回日本生活体験学習学会宮崎大会 現地実行委員
山下 智也(宮崎国際大学)
自由研究発表報告
2017.10.5更新
第19回研究大会の自由研究発表は、乳幼児期における「親の関わり・学び」に関する発表が3事例、震災復興に関わる子どもの体験活動とレジリエンスに関する発表が1事例であった。
「親の関わり・学び」に関する発表では、「発達資産」(生活体験を豊かに生み出すための基礎となる環境や内面をさす概念)について、保護者の発達資産の認識と、保護者の認識する園の保育内容や生活に関する認識の関連についての分析を基にした、園の分類による特徴についての報告があった。また、保護者の「一日保育士体験」による保育園や我が子に対する気付きから、保護者の「保育園への信頼づくりに繋がること」や「子どもの違った側面の発見に繋がる」ことなど、こうした取組の効果に関する報告があった。さらに、家庭教育を重視する熊本県の、幼児期における「くまもと『親の学び』プログラム」の取組の報告があり、それぞれの報告から、乳幼児期の生活体験を含む、「親の関わり」の重要性とその取組について協議をおこなった。
さらに、玄海島での子ども達の体験活動とレジリエンスに関する発表では、社会的な震災からの復興とともに、子ども達の「被災から体験を通して学ぶ」取組について具体的な報告があった。震災直後から物的・心的支援を全国から受ける体験は、東日本大震災の復興にも見られたように、それに応じて生じた感謝の気持ちを込め、和太鼓での演奏を各地に届けたり、島を訪問する人を出迎えたりする取組などから多くのことを学んで、教育の復興も進んでいることが報告された。
総括討議においては、事例を基にしながら「生活体験」との関係を含めて具体的な討議が行われ、乳幼児期における「親の関わり・学び」については、午後の現地シンポジウム「幼児期からの生活体験」に繋ぐこととした。
今回の報告は4事例とも学会理事でしたが、今後、本学会の研究を発信し、発展するために多くの会員の方の研究報告が期待されるところです。
第19回日本生活体験学習学会宮崎大会 自由研究発表司会
中川 忠宣(大分大学)